シラバス参照

開講年度 2019 
科目名 社会調査実習B 
職名/担当教員 人間科学部 教授 大矢根 淳 
期間/曜日/時限 通年 水曜日 3時限
開講区分/校舎 一部生田/生田 
配 当 社会学科34 
単 位
コースコード SOC317 
授業形態  



講義内容
<到達目標>
 社会学的調査研究の先行業績を批判的に摂取して研究計画書を書き上げ、それに基づき現地調査を実施してデータを整理・分析し、調査報告書を書き上げて一冊にまとめられるようになることを、この授業の目的とします。

<講義概要>
 この授業では社会調査の一連の過程を一年間かけて体得していきます。調査の手法としては,まちあるき,聞き書き等を柱とするフィールドワーク(質的調査)、モノグラフの作成が主となります。対象地(フィールド)の基本的属性を把握するために各種既存統計の再集計,分析・解釈等を随時取り入れますが,これは,現地調査に臨むにあたって最低限必要とされる素養であるため,これをこなしても量的調査(統計学的解析)が習得されたわけではありません。このクラスでは質的調査が主となります。
 今年度の現地調査は,東日本大震災発生から「そろそろ10年度目」、しかしながら未だ厳しい被災・生活再建状況に置かれているある街区(宮城県石巻市小渕浜など)における、これまでの・そして現在の奮闘努力の模様を取り上げます。具体的には、被災現地の漁村において、震災・津波・復興事業によって壊されてしまった諸々の関係性がいかに再び今、紡ぎ直されているか、その現場の努力の具体的な姿を見出していきたいと思っています。我々の調査グループでは,現場の「今」をフィールドワークによって解き明かしていきます。この被災地の経験の記録は、数年から十数年後には、将来の次の被災地の皆さんによって、時空を超えて読み継がれ利用されていくことになると思います。
 今年度、この授業はICレコーダーを使ったインタビュー、カメラ(スケッチ)を使った対象把握の技法を、報道取材法、映像論(美学)にも触れながら体得していきたいと思います。
 震災で多くの方が亡くなり,その後の辛苦が厚く重く蓄積されている現場にお邪魔します。現場でのマナーからはじまり,しかるべきフィールドワークの技法,現場に赴くためのかなりの事前学習を授業では重ねていきます。現場の「今」をあなたのフィールドノートに克明に綴って,一生の宝物にしてください。

<授業の形態>
 演習実習形式。毎週,授業の冒頭に作業内容を指示します。授業中は各自が他の履修者と色々相談しながら,しかるべき場所・方法で作業をこなしていきます。数週単位で作業等の成果報告(レジュメを作成してのプレゼンテーション+議論)を重ねていきます。年度末に一年間の調査報告書をとりまとめて刊行し、被災現地にお届けします。この報告書が次年度の履修者の、年度はじめのテキストとなります(皆さんも、前年度履修生の作成した報告書をテキストとして勉強をスタートすることとなります)。

<講義計画>
 おおよそ以下の流れで演習形式の授業を展開していきます。
前期
(0) ガイダンス:年間授業の流れ・夏休みの実習企画案、テキスト等の概説(1回)
(1) 東日本大震災の概説(講義):フィールド「小渕浜」の紹介(4回)
(2) 履修者の関心に即した関連文献・資料の収集、「文献ノート」の作成・蓄積(4回)
(3) 「調査企画書」(Research Proposal)の執筆・報告(議論)(4回)
(4) インフォーマントとのアポイントメント調整、実査事前準備(2回)

夏期実習事業
(5) 実査(現地合宿=夏休み中):8月お盆前の二泊三日の石巻合宿

(6) フィールドノートのとりまとめ(2回)
(7) 関連文献・資料の渉猟(1回)
(8) 聞き取りデータの校正(インフォーマントに朱入を依頼-返信)(3回)
(9) 調査知見の報告(議論)(4回)
(10) 小論執筆(DTP体験=報告書作成)(4回)
(11) 調査研究の社会的還元(サテライトキャンパス等で発表会)(1回) 
教科書・参考書
今橋映子『フォト・リテラシー 報道写真と読む倫理』中公新書、2008年。
大矢根淳他編『復興コミュニティ論入門』/『災害社会学入門』弘文堂,2007年。
大矢根淳他偏『社会調査の基礎』弘文堂,2010年。
山口弥一郎(復刻)『津浪と村』三弥井書店、2011年。
清水展他編『新しい人間、新しい社会: 復興の物語を再創造する』京都大学学術出版会、2015年。
その他、文献・資料等は、授業中に適宜指示します。
参考としてのURL。
https://www.senshu-u.ac.jp/senshuonline/newssenshu/2007.html(災害社会学の挑戦=専大HP) 
成績評価方法・基準
 演習形式の授業ですから,出席・報告・議論・執筆等の課題を滞りなく済ませていくことを成績評価の前提とします。出席することはもちろんですが、数週に一回の割合で実施される作業等の成果報告(レジュメを作成してのプレゼンテーション+議論)に積極的に参加することが望まれます。こうした途中成果物の提出に加えて、最終成果物(修了の小論)の執筆・提出が求められます。
 授業への参加度10点、文献紹介(書評執筆・報告)を前後期一回ずつ(10点×2回)、調査企画書の執筆・報告を前後期一回ずつ(10点×2回)、夏期学外実習(現地調査合宿)の参加とインタビューの実施(20点)、最終報告書のDTP・提出(30点)で評価します。 
履修上の留意点
特になし。 
担当教員へのアクセス
月・火・水曜日の朝9時~夕方6時。この日時帯は生田キャンパスにおりますが、会議等のため研究室には不在のこともあります。 
その他
領域や対象が深刻なものを扱うだけに,日頃の授業には真摯な態度で臨み,インフォーマント,フィールドへの微妙なスタンスを感得・体得していただきたいと思います。 
更新日付 2019/02/13 16:00


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